12/7 先取り学習よりも大切なこと

 こんにちは。羽島幼稚園の「かず・かたち教室」のレッスンでもお馴染み@助手の方です。


 明日は羽島幼稚園にて、年少さん向けの親子レッスンを行います。今回の親子レッスンのテーマは「カレンダーづくり」。親子でオリジナルのカレンダーづくりに取り組んでもらいます。昨日、そのサンプルを作るにあたり、よりリアリティを出すために我が家の娘(年中)に作ってもらいました。算数というよりも、どちらかと言えば工作的な要素の方で楽しんでいたように感じますが、幼児さんを対象にしたレッスンにあっては、「勉強する」というより「楽しむ」ことを優先したとしても、それはそれでいいんじゃないかと思っています。


 私は普段岐南町で小・中学生を対象とした学習塾を運営していますが、算数・数学が苦手な子は実にたくさんいます。とりわけ、「文章題が苦手です」という子が多いですね。それで、何故文章題が苦手なのかと様子を見ていく中で感じたことは、そもそもとして数の概念の理解が不足しているのではないか?ということなんです。「この問題はたし算?ひき算?それともかけ算?わり算なの?」といった質問が出てくることもあるのですが、数の概念が理解できていれば、このような質問は出て来ないのではないでしょうか。こういう質問をしてくる子であっても、計算そのものができないということはありません。ちゃんと計算はできます。計算はちゃんとできるのに、文章題で計算を立てることができない。国語力の問題ということもあるかもしれませんが、それ以上にはやはり数の概念の理解が欠如している影響が大きいと思います。


 羽島幼稚園の秋クラスの中で、「いくつといくつ」というレッスンを行いました。これがとても不評だったようで、「難しい」という声が多数聞かれました。冬のクラスでもこの「いくつといくつ」はカリキュラムの中に入れますが、レッスンの進め方は少し工夫してみようと思います。とはいえ、カリキュラムからなくそうとは全く考えていません。この「いくつといくつ」は数の概念を理解する上で欠くべからざる要素(数の合成と分解)ですから、カリキュラムから削ることができない、というのが表現としては正しいと言えるでしょうか。


 年長さんくらいになってきますと、既に簡単なたし算、ひき算を覚えているお子さんがいます。関心があることは素晴らしいことですから、計算をすることがいけないなどと言うつもりはありません。ただ、計算とともに数の概念に対しても関心を持ってもらえれば、そんな風に思います。と言いますのは、例えば1けた同士のたし算、ひき算であれば、何度も計算しているうちに機械的に覚えることが可能です。それは九九でも同じこと。慣れてさえしまえば、概念の理解とは無関係に答えを導くことができます。しかしどうでしょう、数が段々と大きくなっていきますと、機械的に覚えることは不可能になっていきますから、数の概念を理解している子と理解していない子では計算力に差が生じてきます。それがちょうど小学校3年生から4年生くらいにかけての時期と言えるでしょうか。それまで、算数が得意であると自負していたはずの子が、突如として算数嫌いになってしまう、そんなケースを私は自身の周囲でも何人も見てきました。私が九九を勉強していた頃に、既にわり算を勉強していたはずの子が、どういう訳か中学年を境に算数が苦手になってしまった、そんなケースもあったのです。当時はその理由がわかりませんでしたが、今となって思えば、その子は機械的に計算式とその答えを覚えていたに過ぎず、本質的に数の概念を理解していたとは言えなかったのでしょう。1度「算数が嫌い」という思いを持ってしまうと、なかなかそこから脱することが難しくなり、高学年、中学生になったら、算数・数学の授業に付いていけなくなるといった事態を引き起こす要因となります。そうならないようにするには、数に対する基礎的な理解を徹底することが大切で、先取り学習よりもこちらにこそウエイトを置くべきであろうと思います。


 私達大人は、子供が計算をできるようになると、ついつい先へ先へという欲が出てしまい、本来身に付けておくべき基礎概念を軽視しがちです。しかし、幼児の段階でたし算やひき算がスラスラできる必要など全くなく、数字を読むことも10から20くらいまでで十分です。それ以上の数を知らなくても何ら問題ありません。計算ができることよりも、大きな数を知るよりも、0を含めた10までの数の概念をしっかりと理解すること、こちらの方が遥かに意味があると言えるでしょう。遊びの中から数の概念を自然に覚えていく方向付けをすることが最優先で、しかも「楽しく」というのが大切です。その意味では、最初に書きましたように数字と工作的な要素を組み合わせるということも、「楽しく」学ぶ上では必要なことだと言えるかと思います。

 

 長くなってしまいましたが、どの家庭にもあるような物を使いながら、楽しく遊びながら取り組める力を養うこと、これをこの「かず・かたち教室」では追求していきたいと思っています。